2017年9月8日
湯を沸かすほどの熱い愛

inouemini2

© 2016「湯を沸かすほどの熱い愛」製作委員会

デジタルプレミアムコース:日本映画専門チャンネル(125ch)

放送日
9月17日(日)16:20~
9月24日(日)18:40~

(番組概要)

自主製作映画『チチを撮りに』がベルリン国際映画祭他、国内外の多くの映画祭で絶賛された中野量太監督の商業監督デビュー作。余命を宣告されるも絶望することなく、やり残したことをいくつも成し遂げようと力強く生きる母・双葉(宮沢りえ)。学校でいじめられ引きこもり寸前の娘・安澄(杉咲)を独り立ちさせるため、命の限りも忘れて走り続ける。そして、安澄が一年前に蒸発した父(オダギリジョー)と、死にゆく母のためにした「ある秘密」とは…。昨年度の日本アカデミー賞で、宮沢りえと杉咲花が最優秀主演女優賞と最優秀助演女優賞を受賞するなど、賞レースを総なめにした話題作。
銭湯を営む双葉(宮沢)は、夫・一浩(オダギリ)の一年前の蒸発以来パートに励み、繊細すぎる中学生の安澄(杉咲)を懸命に育ててきたが、突然の余命宣告を受ける。その日から、やるべきことを掲げて実行に移していく。

(井上公子の今日のイチバン↓)

かつての国民的美少女アイドル宮沢りえも43歳という。いろんなごたごたを乗り越え、激痩せもして、再び女優として注目を集めている。苦労して、苦労して、激やせして(劇中の設定)、揚句に末期がんで余命宣告・・・運命の残酷の極みのような人生を歩んでいながら、常に周囲の人を温かく思いやる主人公。いじめに合い、不登校寸前の娘への寄り添い方。筋の通った励まし方。その娘は結婚相手の連れ子で、実子ではない。ろうあ者である実母に再会する日のため、幼い頃から手話を教えていたエピソードには、泣ける~~~
 とにかく、泣けるシーンはいっぱいあるが、つらいシーンには、必ず、救いの仕掛けがセットされているサービス精神がいい!たとえば、宮沢りえ演じる母親も、実母と別れていて、死ぬ前に一目合いたいと出かけていくが拒否される。窓越しに、現在の家族と幸せそうな母の姿を見て、思わず、門扉の置物を投げつけ、家のガラスを割って逃げる。その母親役をりりいが演じています。心に残るシーンです。
 日本映画百花繚乱…かのように見えて、実は似たような路線、原作はコミックやアニメ、テレビドラマの焼き直し・・・結局、映画製作という芸術創作活動が、儲かる確かさの前に消えかけている、そんな不完全燃焼的な気持ちをずっと持ち続けていた。
 例えば「ロクヨン」。テレビドラマの方がよかったと思う。映画化にあたって、何がなされたか・・・俳優陣を豪華顔ぶれにした。そんなところでしょう。テレビの世界が、映画化しているせいもある。放送倫理スレスレのきわどいモチーフや表現が話題作りもあってかOKになっているから。
 じゃあ、映画は何を映し出せばいいのか。テレビの放送枠に収まらない、監督の独自の世界を見せてほしい。この映画を見て、あらためて、つくづくと、そう思った。
 園子温監督の映画に触れた時のことを思い出した。一見ぶっ飛んだ現実だけど、実は見えてないだけでそこここにあるモチーフやエピソードがリアルに手触り感アリアリに、積み上げられて、物語が構築されていく。やわらかいソフト毒が、ちくり、ちくりと効いてくる、今後の創作活動を注目したい監督です。衝撃のラスト・・・とネタバレを事前に見ちゃった私。「法的には問題なかったの?」と現実に引き戻ってしまいましたが、皆さんはどうご覧になりますか・・・。

2017年8月25日
クリミナル・マインド シーズン9

yamamoto

 

 

 

© ABC Studios

デジタルプレミアムコース:スーパー!ドラマTV(124ch)
放送日 :毎週月曜22:00~

(番組概要)

バージニア州クワンティコにあるFBIの重要セクション、行動分析課(BAU・・・Behavioral Analysis Unit)。彼らは無数の犯罪者たちの特徴をデータ化し、行動科学的に分析することで新たな犯罪者の行動を予測する“プロファイリング”のエキスパートが集まった、エリート集団である。全米各地では常に異常な連続犯罪が発生しており、中でも似た手口の殺人事件を繰り返す犯罪者は“シリアル・キラー”と呼ばれる。彼らの犯罪を予測し、ありとあらゆる方法で阻止するのがBAUの使命だ。シリアル・キラーに手が負えなくなった全米各地の警察から、捜査協力の依頼が届けば、すぐさま専用のジェット機に乗り、彼らは全米各地に飛んでいく。

(山本淑子の今日のイチバン↓)

「FBIのプロファイラー・ユニットBAUのメンバーが、シリアル・キラーの事件を追う」カタカナの嵐でやや意味不明ですが、かっこええ感はすっごいわかります。BAUってのは「行動分析課」で、シリアル・キラーはつまり連続殺人犯。プロファイリングってのは犯罪の特徴なんかから行動科学的に犯人ってこんな人って目星をつけることをらしい。ついでに言うなら、クリミナルマインドは「犯罪を犯す性質」=罪なる心、だそうです。ちなみにBAUは実際にある機関なんだとか。連続殺人だけに凶悪で、けっこう衝撃的なシーンの連続。小さなお子様は遠慮しましょう。犯罪と、プロファイラーたちの分析や追跡が交互に進行していくので、サスペンス感が半端なく、ドキドキ、イライラ、ヒヤヒヤ。ラストで「えーっ!」と思わず叫んじゃいました。この回、実は前後編ものの前編で、「つづく…」になってしまったため、消化不良。後編、撮っとけば良かったぁ!犯罪ミステリーはやっぱりテッパンです。

2017年8月23日
ロード・オブ・ザ・リング

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© New Line Productions, Inc.
デジタルプレミアムコース:ムービープラス(122ch)

放送日
8月29日(火)23:15~

(番組概要)

ピーター・ジャクソン監督による小説「指輪物語」の映画化。世界を支配する力を持った指輪を巡る勇者たちの冒険を描いたファンタジー三部作の第1部。時は中つ国第3紀、ホビットの村。全世界を闇の支配下に置くことのできる冥王サウロンの指輪が、若者フロドに託された。フロドは3人の友人と共に、指輪を山の火口に捨てる旅に出る。旅の途中で新たな仲間を得て9人になった一行は、追ってくる魔物と戦いながら目的地を目指す。

(井上公子の今日のイチバン↓)

いわゆるファンタジー文学の先駆け「指輪物語」の映画化はファンにとって奇跡のような出来事だったろう。
物語の壮大さ、奥深さが可視化可能か、また、可視化されることの弊害もある。
事実、一作目の劇場公開時には日本語字幕に抗議があがったとか。原作を読みこんだ人には、ただ一言が
世界をブチ壊されることになる事になるのに、耐えられない…その心理はすごくわかる。
私はそこまでのマニアではないが、映画化には当時、ものすごく興奮したし、懐かしい友に恐る恐る会いに行って
大感動して帰ってきた記憶がある。それ以降、連作を公開ごとに鑑賞し、テレビで放映されれば何度も見てきた。
物語に出会った10代のころには感じなかったことが、大人になると見えてくる。良くも悪くも。そしてさらにハマる・・・。
そもそもスケールの大きさは、地球でない場所の物語。地球人の常識や世界観を超えていく。スターウォーズも宇宙が舞台だけど、現代のわれわれの常識を超える事はない。舞台を宇宙に設定した、人間の父子の壮大な物語というエンターテイメントだ。「指輪物語」の作者トールキンは作家で詩人だが、本業は文献・言語の研究者。「ベオウルフ」というイギリスの伝承研究のほか、北欧などヨーロッパ各地の伝承にも詳しい。それらが物語の設定・構成・登場人物に真実味、リアリティを与え、読者を安心して想像の世界に遊ばせてくれる。
大学生になって初めて文化人類学なる学問に出会い、18年の人生に基づいた常識を覆された。ファンタジーは好きな子どもだったが、それはあくまで作られた世界として割り切っていた。「事実は小説より奇なり」人間の創造は現実を超えてはいかない。ベースは地球上に必ずある。愛読していた萩尾望都の「11人いる!」も、異星人、宗教、言語・・・子どもには目新しい設定だったが、成長につれ、その源泉が見えた。
「指輪物語」もベースはあくまで地球人としての人類の歴史だけれど、モチーフ利用にとどまらない、世界を再構成しているところがすごい。トールキンも作ってて楽しかっただろうなあと思う。大地や自然を作り、時を紡いで歴史を作り、人間も含んだ世界に生きる命を作り、彼らの言語を作って語らせる。創造主になった感覚ですね。
ホビットのフロドをはじめとする旅の仲間たちは、この世界を悪の手から守るため「指輪」を葬る旅に出る。軸はシンプルなストーリーだがその肉づけが分厚くて、ワクワク、ドキドキさせられて・・・ハマる。この点では映像化はすごく良かったと思う。お手軽な恋愛もお涙もない。ごつごつした手触り、自分との闘い、仲間との友情・・・画面も華なく暗いです。旅を続けて戦ってばかりだから、汚れてきたないです。スメアゴルなんて究極にキモイです。でも全部私たちの内面にあるもの。正面から、覗いてみましょうよ、と言いたい。
考えさせられるのは、悪役の描き方。物語が発表されたのは20世紀前半で今ほど人権意識は進んでいない時代でしょう。南部アフリカに生まれたとはいえ、英国人の両親、敬虔なカトリックで人生をほぼ英国で過ごした作者の創作は・・・主人公グループ、ドワーフやホビットは何人とは言えないが、エルフや、アラゴルンを始めとする人間たちはみな白人。しかも北欧系か?敵の冥界の王サウロンの手下は、猿人がベースか?後半に登場する援団は南方からやってくる有色人種でゾウに似た動物に乗ってくる。映像化の弊害かもしれない。原作に忠実に表現しているのだから、今の時代の解釈を加えることの方が問題だと思うけど、小さいお子さん鑑賞には配慮が必要かな?
あ~、語り尽くせない。イライジャ・ウッドあっての映像化という気もするし・・・今回はこの辺りでおしまいにさせていただきます。また機会がありましたら、お付き合いくださいませ。

2017年8月15日
運命の銃弾

yamamoto

 

 

 

©2017 Fox and its related entities. All rights reserved.

デジタルプレミアムコース:FOX(131ch)
放送日 :毎週水曜23:00~

(番組概要)

アメリカ南部ノースカロライナ州の小さなコミュニティーで起こった、黒人の保安官が白人の少年に発砲し、死に至らしめたというアクシデント。事件の精査のため送り込まれた捜査官アッシュと検察官プレストンは事実の追求を行う中で、その裏にもう一つの重大な事件が隠されていることを知る…! 人種問題というセンシティブなトピックを主軸に置き、全米で波紋を呼んだ話題の最新作、日本最速放送!

(山本淑子の今日のイチバン↓)

久々の社会派サスペンスドラマです。平和ボケだと言われる日本でも、最近はヘイトスピーチなんかのニュースで、人種差別する人ってけっこういるんだということを実感しますよね。アメリカでは大統領からしてその旗を振ってるわけで、より深刻な問題なんだと思います。もともと移民によってつくられてきた国家は、原住民の弾圧など暗い歴史も有していると聞きます。「ルーツ」というドラマを思い出します。深い差別の根っこを掘り出そうとするアメリカの良心を感じました。視聴率稼ぎのエンタメドラマが多い中で、自国の闇を探ろうとする果敢な挑戦です。地味ですが、伏線がいくつも張られ、見ごたえのある展開が期待できそう。社会の大きなうねりの中に、人物ひとりひとりのドラマが丁寧に描かれていて、物語に引き込まれます。これは社会問題を描く上で、とても重要なことでしょう。「情報は時とともに散逸するが、物語は時を超えて人の心に寄り添う(横山秀夫)」

2017年8月14日
オオカミ少女と黒王子

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©八田鮎子/集英社 ©2016 映画「オオカミ少女と黒王子」製作委員会
デジタルプレミアムコース:日本映画専門チャンネル(125ch)

放送日
8月20日(日)16:35、8月27日(日)18:50ほか

(番組概要)

彼氏いない歴=年齢の女子高生がニセ彼氏を演じてくれるイケメン男子と出会うが、彼はドS性格全開の“黒王子”だった!?理想のカレを演じてもらう条件はドS王子への絶対服従。ウソから始まる人生最初のホンキの恋の行方は…。二階堂ふみと山﨑賢人の共演によるラブコメディ。高校1年生のエリカ(二階堂ふみ)は彼氏がいたことがないにもかかわらず、恋愛経験豊富な友人たちに見えを張り、彼氏がいるふりをする“オオカミ少女”だった。本当に彼氏がいるのか友人たちに疑われ始めたエリカは、街で撮ったイケメンの写真を見せて自分の彼氏だと言い張りその場をしのぐが、そのイケメンが同じ学校に通う恭也(山﨑賢人)だと知ってしまう。

(井上公子の今日のイチバン↓)

「ウソも方便」私たち人間はウソをつく生き物だ。「ウソついたことない」人なんているのだろうか。子どもの頃、誰もが「ウソはいけません」と教えられる。けれど、年を重ね経験を積むうちに「ウソも方便」が共通認識になっていく。ウソには悪いウソと良いウソがある。身勝手な言い分だが、ケースバイケースでしょう?
 末期がん患者で余命いくばくもない人に「大丈夫、治るから」と希望を失わせないウソ。一見美しいが、本人にとっては厳しいウソ。そう、ウソをつくと人の心は罪悪感にさいなまれ、本当のことを言って楽になりたくなる…って取調室みたい・・・。でも、患者のことを思えば、自分の心がいくら苦しくても、相手のためにウソを突き通すという苦行を貫く。相手を思うウソは美しいが、人は往々にして保身のウソをつく。
 仕事で、家庭で、自らの失敗をカバーして、あわよくば利を上げようとウソをついてしまう。そのウソがどんな結果を招くか、それがもとでどんな窮地に追い込まれるか、つくときは考えない、その場をしのぐためだもの。
二階堂ふみと門脇麦。私の中では評価の高い若手女優の二人。それぞれに、与えられた役目を果たしたが、ちょっと役が不足では?二階堂はアヒル口を多用して、主人公のキャラを楽しんだと思う。クライマックスでの忍者走りも必見!リュック背負うと確かに腕は振れないんだよね。
 さて、高校生のストーリー、ラストに修学旅行らしき行事に向かって話は進む。「研修旅行」と語られる。東京の高校生は神戸(関西方面)に行くんだな。納得。しかも、神戸の震災記念館で語り部から体験談を聞いている。
高校生らしさ、リアル感を演出してる。リアルは大事。主人公はじめ高校生たちはリアルを充実させるため、?充実してると思われたいため、見栄を張りウソをつく。リアルな高校生像を演出して、見る側の共感を得たい・・と制作側は思うのではないか。でもこの映画は違う。同級生がモデルやハーフみたいな面子ばかりで、勉強や部活のシーンなく、家族の絡みもなく(唯一、門脇麦の弟、菜々緒が主人公山崎賢人の姉として登場)、高校生のリアルなんて求めてないのだ!高校を舞台にしただけの恋愛映画なのだ。だから、主人公が二階堂ふみでいいし、余分な背景は要らないのだな。
 それにしても、男子は弱いな。山崎賢人演じる「黒王子」は親の離婚から立ち直れず、素直になれない。「アオハライド」の東出昌弘も、そんな面を抱えてた。救ってくれる女子を待ってるだけじゃダメじゃん。今や「シンデレラ・シンドローム」は、立場逆転なのですね。